カフェをこよなく愛する静かな男の駄文

カフェをこよなく愛する静かな男の駄文

ぱおん教徒

コロナ自粛、不景気、先の見えない不安の中で誰しもが神にすがり助けを求めておりました。

私もその一人だったのかもしれません。

 

もちろん、神様の存在など信じておりませんでした。

あの日までは、、、

 

 

令和3年初夏某日

 

うだるような暑さが続く中で、オタクおじさん達は、アスファルト砂漠の中に、メイド喫茶という名のオアシスを見いだしておりました。

 

もちろん、私も例外ではありませんでした。

 

その日も、ミイラの如く枯れきった心に、潤いを与えんと横浜の雑居ビル2階にたたずむ某メイド喫茶に向かいました。

 

メイド喫茶へと続く雑居ビルの細く急な階段は、人生に迷う私を優しく包みこみ目的地へといざなったのです。

 

「カラ~ン♪」

『お帰りなさいませ、御主人様~あっ、まりもしゃん!』

私が扉を開けると、カレンさんが出迎てくれました。

『あっ、あ、あ、、、カレンさん、、、』

私はしどろもどろに答えました。

 

カレンさんは、私のような人間にもフレンドリーに接してくれる愛されメイドさんで、私もカレンさんが好きなのですが、あまりに多くのメイドさんに好きと言い過ぎて失敗した過去に捕らわれている私は、素直に慣れずなんだかドキマギしてしまいました。

 

私がテーブル席に着き、カウンターを確認するとカウンターにはレイラさんがおりました。

 

レイラさんはゾウさんが好きで、ゾウさんの絵をよく書いてくれます。

実は私は、レイラさんのことも好きなのです。

 

(同時に2人のメイドさんを好きになってしまうなんて、いったいどっちのモクテルを頼めばいいんじゃ、、、)

 

そんなことを考えながら、カウンターを見ていると、レイラさんがこちらを見ながら何かを、口ずさんでおりました。

 

耳を澄ますと、、、

『ぱおん、ぱおん、ぱおん、ぱおん、、、、』

と聞こえて来たのです。

 

レイラさんは一点を見つめ、ぱおんお経を唱えていたのです。

 

その瞬間、私は金縛りにあったかのように身体が痺れ、さらにはレイラさんだけでなく、カウンターに座っていた、トマトジュースおじさんも白目をむきながら、ぱおんお経を唱えだし、カレンちゃんにいたっては、白目でぱおんお経を唱えながら、おもむろにネコ缶を取り出しムシャムシャと食べ始めたのです。

 

そして、他のメイドさんやお客さんも白目でぱおんお経を唱え、ぱおんが共鳴しだしたのです。

 

『ぱおん、ぱおん、ぱおん、ぱおん、、、、』

 

私は突然の出来事に恐怖を覚えました。

 

ぱおんが響く中、カウンターにいたレイラさんから4本の腕が生え、さらに顔がピンクのゾウさんになり、その様相はヒンドゥー教のゾウの神様「ガネーシャ」そのものでした。

 

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ガネーシャと化した、レイラ神は座禅を組みそのまま宙に浮き私の前まで来て、人差し指を天に向け

『汝、迷うことなかれ、、今は学問に専念し精進するのです。』

と言い私に神の啓示を示してくださったのです。

 

私は、椅子から降り地べたに額を付け土下座しながら答えました

『あ、ありがたきお言葉、、、』

 

『レイラ神!』

その瞬間、私は目を覚ましました。

 

私は先程までと同様、椅子に座っており、レイラさんは人間の姿でカウンターにいて目の前にはカレンさんがおりました。

『まりもしゃん!私のことレイラさんと呼び間違えましたね!』

『いや、違うんです、いま変な夢を、、、!!』

 

私が、そう言いながら顔を上げると、なんと、カレンさんの口元にネコ缶の餌がビッシリと付いていたのです。

 

(あれは、夢じゃなかったのか!!)

 

これが、神との遭遇の一部始終、そしてカレンちゃんをレイラさんと呼び間違えた事の顛末なのです。

 

〜完〜