カフェをこよなく愛する静かな男の駄文

カフェをこよなく愛する静かな男の駄文

アザラシ探検隊

アザラシ探検隊

 

白髪にしゃがれ声、杖をついて帷子川沿いを歩く70代の老人、老人は川に向かって呼びかける『夢子〜!どこじゃ〜!』

 

そう、その男こそカフェ男であり、すっかり年老いてカフェ爺となっていた。

 

『夢子が川に消えたあの日から40年か、、、』

カフェ爺は手に握りしめた色褪せた1枚のアザラシの写真を眺めながらそう呟いた。

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『す、すまんが、このアザラシを見かけなかったかのう、、、』

毎日の様に通り行く人々に聞いて周るカフェ爺は、いつしか《帷子川のアザラシ爺》と呼ばれていた。

 

『今日も手がかりすらないとは、、、』

カフェ爺はベンチに腰掛け遠い40年前の記憶を辿っていた。

 

当時、カフェ爺が通っていた帷子川沿いの某カフェには、夢子という店員さんがおり、彼女はいつもカウンターにいて、アザラシの様な笑顔でお客さんに愛嬌を振りまいていた。

 

ところがある日、事件は起きた。

 

その日は、真夏でとても暑い日だった、夢子がカウンターにいるのを確認し、カフェ男はカウンターに座った。

 

『夢子さん、アイスティーのBIGビックリサイズをください。』

『かしこまりましたー!』

夢子は元気に答える。

 

BIGビックリサイズというのは+400円払うとドリンクをピッチャーサイズに変更できるというものであった。

 

『お待たせしましたー!』

夢子がアイスティーBIGビックリサイズをカフェ男に手渡す。

 

その瞬間、

『バシャー!』

 

なんとカフェ男は手を滑らし、アイスティーBIGビックリサイズを夢子にかけてしまったのだ。

 

すると、びしょ濡れになった夢子の身体が見る見る内に灰色となり、なんとアザラシの姿になってしまったのである。

 

『この姿を見られたからには、もうここにはおれませぬ(;∞;∩ )』

 

そういうと夢子アザラシさんはコロコロと転がりながら店を出て行ってしまった。

 

『ま、待ってくれ!』

 

急いで追いかけたカフェ男であったが、追いついた頃には、夢子アザラシは既に川の中にいてゆっくりと川の中に潜っていく。

『ゴポゴポゴポ〜(;∞;∩ )』

 

カフェ男は急いで携帯のカメラ機能を使い写真を撮った。

 

その時の写真こそ、カフェ爺が持っているその写真なのである。

 

その日から、カフェ男はカフェ爺になるほどまでの長い期間、全国の川という川をアザラシを探して回った。

 

しかし、見つからなかった。

 

『もう、この川しかないんじゃ、夢子が消えた帷子川、、、』

 

その時、

『お爺さん、あっちにアザラシみたいのいたよ!』

ベンチでうなだれるカフェ爺に小学生くらいの男の子が声をかけてきた。

 

『なんじゃと!?それはどこじゃ、すぐに案内しとくれ!』

 

『ほら、あそこ!』

小学生が指差した先、川の中央に白い物体が浮いていた。

 

『夢子〜!わしじゃ〜!あの時の事を一言謝りたいんじゃ〜!』

カフェ爺は、杖も捨て叫びながら川へと入っていった。

 

全ての力を出し切り、白い物体まで泳ぎ着いたカフェ爺

『夢子〜!、、ゆめ、、、!???』

 

しかし、近づいてみると白い物体は夢子アザラシではなく、ただの発泡スチロールであったのだ。

 

カフェ爺のポケットから流れでた、夢子アザラシの写真が川に浮かび波で裏返る。

そこには、《鴨川SEAWORLD》と書かれていた。

 

カフェ爺が自分で撮ったと思っていた夢子アザラシの写真は水族館のポストカードだったのである。

 

『ゴポゴポゴポ〜(^ω^∪)』

川に沈みゆくカフェ爺、薄れていく意識の中で全てを思い出していた。

(そうか、、、全てはわしの妄想だったのか、、、夢子は今もどこかで元気にしている、その事を思い出せただけで、わしゃ、幸せじゃ、、、)

 

 

以上は、フィクションであり実在の人物、団体等とは一切関係ありません。